強い者は生き残れない

「強い者は生き残れない」を読みました。

ダーウィンに始まった進化論は、時代とともにその解釈が新しく付け加えられていく。
この本で紹介されている進化論は、強いものが過酷な環境を乗り越えるのではなく、環境変化に対応できたものが生き残れるという新しい進化論だ。そこには、自分だけが利益を搾取するという利己主義ではなく、他者と共存できる利他主義の生物が生き残るという進化の実際がある。これは現代社会にも当てはまり、利己主義で突き進めてきたファンド資本主義経済はいまや破綻を迎えている。強者が自分の利益だけ求める社会は、絶滅の危機においらやれ、結局自分で自分の首を絞めるという結果になるという。長期的な視点にたてば、他者と共存、協力の関係を作れるものだけが、長い間子孫を繁栄されることができるのである。生物が絶滅しないようにするにはいかに強いものになるのかではなく、いかに存続させるかが重要であると本書では強調されている。人間がどのような未来を迎えるのか、今現在の我々の選択にかかっているとも言える。
資源を搾取し続けるのではなく、いかに細く長く持続可能な社会を維持できるか。絶滅か繁栄か、遠い未来のようだが、我々は何世代も先を見据えて生きていかなければならない時代に突入している。


「強い者は生き残れない〜環境から考える新しい進化論 吉村仁 著 (新潮新書)」