2011-01-01から1年間の記事一覧

2000年間の南方振動の記録

先日は、西赤道太平洋での温度躍層付近の水温復元から、過去のエルニーニョ南方振動(ENSO)の変動を復元する研究を紹介しましたが、今回は降水量から南方振動の復元を行っている論文を紹介します。 + エルニーニョ南方振動(ENSO)は、熱帯太平洋で大気と海…

過去150年間の沿岸域での化学肥料の影響

サンゴに関する論文。 +++ 人間活動による沿岸の富栄養化や汚染の原因を評価するのに適した道具として、窒素同位体比が用いられてきた。窒素の起源によって窒素同位体比の値が異なり、例えば下水だと8‰、農業用の化学肥料だと0‰という値をもつ。 特に、…

1000年間のENSOの記録

過去1000年間のENSO(エルニーニョ南方振動)に関する論文です。 + 海洋に生息するプランクトン、浮遊性有孔虫の炭酸カルシウムの殻は、海底堆積物の中に残り、過去の情報を保持している。 過去1000年間について、西赤道太平洋のインドネシア沖の海…

更けゆく秋の夜

犬童球渓の「旅愁」。秋になるとこの歌を思い出します。私が3年間を過ごした小学校では、毎年、犬童球渓音楽祭に出かけていました。 全校児童が60人という小さな学校でしたが、60人にはもったいないほどの大自然に囲まれた小学校でした。ふるさとを思い…

東シナ海陸棚上への黒潮の侵入

論文紹介です。 シミュレーションと観測データをあわせて黒潮と台湾暖流の挙動を調べています。10ページ程度でレビューもたくさんあり読みやすい論文でした。以下は、内容のつまみぐい。 + ・黒潮のsubsurface(亜表層)からの栄養塩の供給が、陸棚上の生物…

INQUAの報告

7月後半は1週間、スイスのベルンで開催されたINQUA(国際第四紀学会)に行ってきました。ポスター発表を行いましたが、なんとStudent Poster Award (学生ポスター賞)をいただきました。 大変名誉なことです。これからも精進いたします。

CMSIの記事

実は、半年ほど前から計算物質科学イニシアティブ(CMSI)というところにお世話になっております。 計算物質科学、つまり大型スパコンを使った研究を発展させていこうという組織なのですが、そこが発刊している広報誌をお手伝いしております。 【CMSI】 http…

科学コミュニケーションの視点

東大、地震研アウトリーチ室の大木聖子さんが 9月5日(月)にNHKの視点・論点に出演されるそうです。=== NHK総合 午前4時20分〜4時30分 再放送は,NHK教育 午後0時50分〜午後1時 ===テーマは、『地震の科学と情報発信』。大木さんは、地震研のアウトリ…

科学の楽しみ

文献を読んでいて、印象に残ったことば。 だれにとっても、いつかの時期に、人の言葉にたよらず、一から自力でなにかをま なんだ経験があるはずだ。自分がゼロからこつこつとまとめあげた知識、自分が体 験からまなんだ知識を人に話すことには、ある特別な満…

夏休みセミナー

夏休みですが、今日はセミナーに参加しています。夏休み特別企画で、地惑の多田先生、茅根先生、近藤先生、中村(尚)先生らが学生向けに研究内容を解説してくれるというセミナー。共同研究の可能性、共同指導の可能性を探ろうという主旨らしいのですが、そ…

遠く離れた地域が関係している

7月のnature geoscience に中国の石筍のシミュレーションの論文がでていました。7月末に参加したINQUA(第四紀連合国際大会)のプレゼンテーションでもこの論文が引用されていたものもあり、注目度の高い論文になりそうです。中国の石筍の酸素同位体比の解…

円石藻は海洋酸性化に影響を受ける

あっという間にもう8月になってしまいました。。。 論文紹介も学会参加などでさぼってしまって、、、すみませんっ。 今日は、先週号のnature から、海洋酸性化で炭酸塩を作る生物、円石藻にどのような影響を与えるかという論文を紹介したいと思います。 + …

IGCP581-2nd報告

先週までは北海道で開催されたIGCP581のシンポジウムでばたばたしてました。http://portal.unesco.org/geography/en/ev.php-URL_ID=13012&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html シンポジウムの後には、石狩川周辺の巡検にも参加しました。 写真は始新世の露…

ヤンガードリアスに熱帯収束帯が南下した証拠

論文紹介、5日目に突入です。 3日坊主で終わらなくてよかった(汗)来週末に、北海道で行われるIGCP581のシンポジウムで発表しなければいけないので、これからしばらくはアジア〜インドの石筍や海、湖の記録にフォーカスして紹介していきます。本日は、2…

有孔虫の殻の詳細な元素分布

今日の紹介論文はマニアックです。 私の研究でも使っているように、有孔虫の炭酸塩の殻に含まれるマグネシウム(Mg)は過去の水温を復元する水温計として使われてきました。 これまで、Mgは殻に均一に分布しているのではなく殻の表面に濃集していることがこの…

南極周回流の影響

みんさん、こんにちは。 やっと雨があがりましたね。今日は、Scienceの5月27日号から、南極の周回流に関する論文です。 始新世〜漸新世の中層水の変動を明らかにしたことは意義のあることですが、この論文は読みにくかった、、、。 + 約3000万年前の南極…

300万年前のENSOの証拠

週末には、AGUから新着論文のメールが届きます。 本日は、Paleoceanographyに掲載された300万年前のENSO変動を研究した論文を紹介します。 東赤道太平洋のコア から浮遊性有孔虫を使って温度躍層の経年変動を復元するという手法です。 ODP site 846はLawrenc…

冬季アジアモンスーンの指標

久しぶりの論文紹介の更新です。 地球惑星連合大会で会った人に最近紹介してないね、と言われてしまいました。。。 見ている人がいると思うとがんばろうと思いますね。本日紹介の論文は連合大会の発表で知った北海道大学の山本さんたちの研究です。 なんと北…

6月5日開催 理学部公開講演会

震災の影響で、延期されていた東大、理学部の公開講演会が6月5日に開催されることになりました。今回のテーマは「身近で大きな理学」です。 南極の大気観測の話、経済に利用されている数学の話、サトイモ科の植物テンナンショウ属の進化の話を、最先端で研究…

先日の南極コアの論文の結果は正しいか?

先週の日曜から金曜まで、地球惑星連合大会2011に参加してきました。その大会が終わって同じ分野の研究者の方々と雑談していたときに、以前紹介した南極の氷床コアの論文(Laepple et al., 2011)が話題にでました。 Laepple et al.(2011, nature)では、…

南極の氷床コアはミランコビッチ理論を支持しない?

さて、私も博士課程の2年生になりました。 あと実質1年半で博士論文を書かねばなりません。 1年半とは、長いようで短い。後悔せぬようやっていきたいです。今日の論文は、nature 3月3日号のLetterから南極の氷床コアについての論文です。 + これまで、…

G. inflataのMg/Ca温度計

今日の論文紹介です。 有孔虫 G. inflataのマグネシウム/カルシウム比(Mg/Ca)を用いた古温度計の換算式がでました。 + G. inflataは、温度躍層に生息する有孔虫として、過去の温度躍層の変化をみるのに適した種だ。この論文では、南大西洋の38のコアト…

二酸化炭素が高くなかった過去の温暖期

久しぶりに論文紹介です。 といっても1999年のnature のNews and Viewsです。。。 + 次の世紀には、二酸化炭素の上昇によって地球の平均気温が2〜5℃上昇すると言われているが、実は中新世中期の1450万年〜1700万年以前は現在より6℃も気温が高かった時…

Science WIndow記事掲載

(独)科学技術振興機構(JST)が発行する科学雑誌サイエンスウィンドウの2011年 早春号(2−3月)に記事が掲載されました!今回は、「特集 地図が伝える私たちの世界」で執筆させていただきました。 国土地理院、科学未来館、海上保安庁に取材に行き、…

「温暖化懐疑論批判」ダウンロードサイト

今日も「今日の論文」を紹介しようと思いましたが、大学に肝心の論文を忘れてきたみたいです。。。 もう大分昔になりますが、ブログで「温暖化懐疑論批判」という冊子を紹介しました。 市販はされてないので、もう手に入れられないかと思ったのですが、なん…

グリーンサハラのころ

またまた今月のnature geoscience から気候変動に関わる論文です。アフリカ大陸の西側、北緯20度から南緯20度までで採取された海洋コアを使って、最終氷期からのアフリカ大陸の湿潤乾燥を調べています。調べたのは、炭素の同位体比。δ13Cから、C3植物と…

科学コミュニケーションの今後

東大の科学コミュニケーションのグループ、「0to1」や「BAP」など全国の学生の科学コミュニケーショングループが集まって作っている情報誌があります。情報誌といっても、きちんとした冊子ではなくPDFの形で皆に配布しています。 仮の名を四季報といいますが…

博士論文構想

今日は、私が所属する表層セミナーで、博士論文の構想発表でした。 これから2年かけて博論をまとめますが、やっぱり博論ともなるとなかなか厳しくなるんだなと思います。 教官から出てくる質問も修士のときとは違い、根本的なところからつっこまれます。ま…

最終融氷期の南極の変動

今月のnature geoscienceに、新しい南極のコアの解析結果が出ました。このTalos Dome coreは、ロス海近くの沿岸部で掘削された氷のコアです。 これまでは、南極の内陸部と沿岸部で最終融氷期の酸素同位体比の変動パターンが異なっている可能性が指摘されてき…