南極周回流の影響

みんさん、こんにちは。
やっと雨があがりましたね。

今日は、Scienceの5月27日号から、南極の周回流に関する論文です。
始新世〜漸新世の中層水の変動を明らかにしたことは意義のあることですが、この論文は読みにくかった、、、。

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約3000万年前の南極大陸南アメリカ大陸が離れてドレーク海峡ができ始新世後期から漸新世前期にかけて、全球的な寒冷化が始まるとともに南極大陸に氷床ができ始めたと言われている。この寒冷化には、南極周回流(Antarctic circumpolar current; AAC)の発達が寄与していたと考えられている。この時期には南極大陸南アメリカ大陸ドレーク海峡によって隔てられ、また南極大陸とオーストラリアの間のタスマンゲートウェイが深くなり南極が他の大陸と隔たられたため、南極大陸の周りにAACができたのだ。
現在では、南極の周りには表層の流れととともにそれとは逆向きに流れる南極中層水が存在しているが、表層の周回流だけでも南極を隔絶した寒い地域にするのに十分と見なされている。深層水が影響する領域では、漸新世での酸素同位体比のパターンは分かってきたが、中層水の発達についてはあまりよく分かっていなかった。そこで、本研究では、AACの発達に伴い、中層水がどう発達してきたのかを明らかにする。
北大西洋深層水(NADW)の循環セルは、北向きに流れる栄養塩に富む南極中層水(Antarctic intermediate water; AAIW)の存在があることによって終了する。NADWとAAIWの強さは、AACの強さとその深さによって影響を受けている。

北大西洋で掘削された深度の浅い2本の海洋コア(古水深〜1500mと〜600m)を使い、その底生有孔虫のδ18O, δ13C, Mg/Caを測定した。
δ18Oからは、南極氷床ができたことによる変動、Oi-1と呼ばれる重くなるシフト(1‰)が確認された。他地域の底生有孔虫の記録と比較してみると、Oi-1に伴って南半球高緯度域の値よりも北大西洋の値が軽くなっていることは、現在と同様に、南を起源とした底層水の方が北を起源とする深層水よりも水温が低いことを意味する。
しかし、δ13Cの値は漸新世を通して底層水の領域での南と北の差はあまりない。一方で、本研究の結果の中層水の地域(600m水深,ASP-5コア)では、中期漸新世から中新世前期まで、他地域よりも軽い値をとる。これは、底層で有機物の分解が盛んに行なわれたことを示している。
現在の太平洋でも、酸素を十分に含んだ中層水が有機物の分解を助け、軽い12Cが放出されることでδ13Cの値が軽くなることが知られている。しかし、今回確認されたδ13Cの軽くなるシフトは現在の太平洋よりも大きい。
前期漸新世にδ13Cが軽くなったのは、AACが強まったことと深くなったことによってAAIWの形成が強められた証拠になるだろう。
今回のASP-5コアの結果からは、ドレーク海峡が完全に開く前に北大西洋中緯度域までAACの影響が及んでいたことを明らかにした。

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Impact of Antarctic Circumpolar Current Development on Late Paleogene Ocean Structure
Miriam E. Katz,Benjamin S. Cramer,J. R. Toggweiler,Gar Esmay,Chengjie Liu, Kenneth G. Miller,Yair Rosenthal, Bridget S. Wade,and James D. Wright
Science 27 May 2011: 1076-1079.[DOI:10.1126/science.1202122]