300万年前のENSOの証拠

週末には、AGUから新着論文のメールが届きます。
本日は、Paleoceanographyに掲載された300万年前のENSO変動を研究した論文を紹介します。
東赤道太平洋のコア から浮遊性有孔虫を使って温度躍層の経年変動を復元するという手法です。
ODP site 846はLawrence et al.(2006, Science)にも載った東赤道太平洋を代表するコアですね。

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赤道域は大量の熱を貯蔵しているので、将来の温暖化に伴いENSOがどう変動するのかは、重要な問題である。その点で、今から300万年前の温暖期は将来の温暖化世界のアナログとして注目されている時代である。先行研究では、恒常的にEl Ninoの状態が続いていたのではないかと言われているが、数年スケールのENSOが存在したのかどうかは明らかにされていなかった。
この研究では、3種類の浮遊性有孔虫を使い、8つのタイムスライスで有孔虫の酸素同位体比の分析を行い経年変動の変動幅を復元した。用いられた種は、生息深度の違うG. ruber, G. minaridii, N. dutertreiである。この3種について個体ごとの酸素同位体比(1種につき40個体)の分析を行っている。
その結果、300万年前にも現在と同様な数年スケールのENSOが存在したことを示唆し、その変動幅も現在と同程度であった。

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Persistent El Niño–Southern Oscillation variation during the Pliocene Epoch
N. Scroxton,S. G. Bonham, R. E. M. Rickaby, S. H. F. Lawrence, M. Hermoso, and A. M. Haywood
PALEOCEANOGRAPHY, VOL. 26, PA2215, doi:10.1029/2010PA002097, 2011