【今日の論文】2019年まで

Clumped isotope vs Mg/Ca

Breitenbach, S. F. M., Mleneck-Vautravers, M. J., Grauel, A.-L., Lo, L., Bernasconi, S. M., Müller, I. A., et al. (2018). Coupled Mg/Ca and clumped isotope analyses of foraminifera provide consistent water temperatures. Geochimica Et Cosmo…

日本中部地方の鍾乳石のd18O

2週間前、Arizona 大学の Jay Quadeさんがブラウン大学でセミナーで話したときに、この論文の話題になった。 - Temperature and seawater isotopic controls on two stalagmite records since 83 ka from maritime Japan Mori et al. Quaternary Science Re…

中国鍾乳石の解釈、モデルから

引き続き、鍾乳石のd18Oの解釈を再考する論文。 2014年発行でHai Chengも共著者だ。Yongjin Wang も入っているところからも、中国鍾乳石グループの解釈としては、その場の降水ではなくこの結論のmonsoon windあるいは北部の降水、(降水のd18O)ということだ…

Deglaciaitonの中国鍾乳石の解釈

1ヶ月前のScienceから - Zhang et al., Science 362, 580–583 (2018) East Asian hydroclimate modulated by the position of the westerlies during Termination I - ハインリッヒ1(H1)とヤンガードリアス(YD)での中国鍾乳石のd18Oを解釈するために、tra…

エルニーニョとエルニーニョモドキが中国の降水量へ与える影響

El NinoとEl Nino Modokiで中国の夏の東アジア夏季モンスーンによる降水分布の違いを調べた。El Ninoのdecay phase(衰退期;春ごろ)では、太平洋高気圧が強まるので南で降水量増加、北で降水量減少という結果になるが、Modokiの場合は、太平洋高気圧があま…

南極の氷床コアのCO2の炭素同位体比の記録

新着論文の紹介です。 + 5月11日のSceince誌から。 南極のヨーロッパチームのEPICAコアの二酸化炭素の炭素同位体比を分析して、退氷期の二酸化炭素の増加が何によるものだったかに、新たな制約を与えた論文。17000年前から15000年前にかけて、CO2の炭素同…

1961年から2008年までの海水面上昇とエネルギー収支

海水面上昇とエネルギー収支に関するレビュー論文。1961年から2008年までの海水面の上昇は、1年間で約1.8mm。 そのうち、0.8 mmが海水温の上昇、0.7 mmが山岳氷床や氷河の融け水(このうち、グリーンランドと南極の寄与は0.4 mm)。 + Revisiting the Earth'…

2000年間の南方振動の記録

先日は、西赤道太平洋での温度躍層付近の水温復元から、過去のエルニーニョ南方振動(ENSO)の変動を復元する研究を紹介しましたが、今回は降水量から南方振動の復元を行っている論文を紹介します。 + エルニーニョ南方振動(ENSO)は、熱帯太平洋で大気と海…

過去150年間の沿岸域での化学肥料の影響

サンゴに関する論文。 +++ 人間活動による沿岸の富栄養化や汚染の原因を評価するのに適した道具として、窒素同位体比が用いられてきた。窒素の起源によって窒素同位体比の値が異なり、例えば下水だと8‰、農業用の化学肥料だと0‰という値をもつ。 特に、…

1000年間のENSOの記録

過去1000年間のENSO(エルニーニョ南方振動)に関する論文です。 + 海洋に生息するプランクトン、浮遊性有孔虫の炭酸カルシウムの殻は、海底堆積物の中に残り、過去の情報を保持している。 過去1000年間について、西赤道太平洋のインドネシア沖の海…

東シナ海陸棚上への黒潮の侵入

論文紹介です。 シミュレーションと観測データをあわせて黒潮と台湾暖流の挙動を調べています。10ページ程度でレビューもたくさんあり読みやすい論文でした。以下は、内容のつまみぐい。 + ・黒潮のsubsurface(亜表層)からの栄養塩の供給が、陸棚上の生物…

遠く離れた地域が関係している

7月のnature geoscience に中国の石筍のシミュレーションの論文がでていました。7月末に参加したINQUA(第四紀連合国際大会)のプレゼンテーションでもこの論文が引用されていたものもあり、注目度の高い論文になりそうです。中国の石筍の酸素同位体比の解…

円石藻は海洋酸性化に影響を受ける

あっという間にもう8月になってしまいました。。。 論文紹介も学会参加などでさぼってしまって、、、すみませんっ。 今日は、先週号のnature から、海洋酸性化で炭酸塩を作る生物、円石藻にどのような影響を与えるかという論文を紹介したいと思います。 + …

ヤンガードリアスに熱帯収束帯が南下した証拠

論文紹介、5日目に突入です。 3日坊主で終わらなくてよかった(汗)来週末に、北海道で行われるIGCP581のシンポジウムで発表しなければいけないので、これからしばらくはアジア〜インドの石筍や海、湖の記録にフォーカスして紹介していきます。本日は、2…

有孔虫の殻の詳細な元素分布

今日の紹介論文はマニアックです。 私の研究でも使っているように、有孔虫の炭酸塩の殻に含まれるマグネシウム(Mg)は過去の水温を復元する水温計として使われてきました。 これまで、Mgは殻に均一に分布しているのではなく殻の表面に濃集していることがこの…

南極周回流の影響

みんさん、こんにちは。 やっと雨があがりましたね。今日は、Scienceの5月27日号から、南極の周回流に関する論文です。 始新世〜漸新世の中層水の変動を明らかにしたことは意義のあることですが、この論文は読みにくかった、、、。 + 約3000万年前の南極…

300万年前のENSOの証拠

週末には、AGUから新着論文のメールが届きます。 本日は、Paleoceanographyに掲載された300万年前のENSO変動を研究した論文を紹介します。 東赤道太平洋のコア から浮遊性有孔虫を使って温度躍層の経年変動を復元するという手法です。 ODP site 846はLawrenc…

冬季アジアモンスーンの指標

久しぶりの論文紹介の更新です。 地球惑星連合大会で会った人に最近紹介してないね、と言われてしまいました。。。 見ている人がいると思うとがんばろうと思いますね。本日紹介の論文は連合大会の発表で知った北海道大学の山本さんたちの研究です。 なんと北…

先日の南極コアの論文の結果は正しいか?

先週の日曜から金曜まで、地球惑星連合大会2011に参加してきました。その大会が終わって同じ分野の研究者の方々と雑談していたときに、以前紹介した南極の氷床コアの論文(Laepple et al., 2011)が話題にでました。 Laepple et al.(2011, nature)では、…

南極の氷床コアはミランコビッチ理論を支持しない?

さて、私も博士課程の2年生になりました。 あと実質1年半で博士論文を書かねばなりません。 1年半とは、長いようで短い。後悔せぬようやっていきたいです。今日の論文は、nature 3月3日号のLetterから南極の氷床コアについての論文です。 + これまで、…

G. inflataのMg/Ca温度計

今日の論文紹介です。 有孔虫 G. inflataのマグネシウム/カルシウム比(Mg/Ca)を用いた古温度計の換算式がでました。 + G. inflataは、温度躍層に生息する有孔虫として、過去の温度躍層の変化をみるのに適した種だ。この論文では、南大西洋の38のコアト…

二酸化炭素が高くなかった過去の温暖期

久しぶりに論文紹介です。 といっても1999年のnature のNews and Viewsです。。。 + 次の世紀には、二酸化炭素の上昇によって地球の平均気温が2〜5℃上昇すると言われているが、実は中新世中期の1450万年〜1700万年以前は現在より6℃も気温が高かった時…

グリーンサハラのころ

またまた今月のnature geoscience から気候変動に関わる論文です。アフリカ大陸の西側、北緯20度から南緯20度までで採取された海洋コアを使って、最終氷期からのアフリカ大陸の湿潤乾燥を調べています。調べたのは、炭素の同位体比。δ13Cから、C3植物と…

最終融氷期の南極の変動

今月のnature geoscienceに、新しい南極のコアの解析結果が出ました。このTalos Dome coreは、ロス海近くの沿岸部で掘削された氷のコアです。 これまでは、南極の内陸部と沿岸部で最終融氷期の酸素同位体比の変動パターンが異なっている可能性が指摘されてき…

エルニーニョ南方振動

最近は現在の気象の勉強をしています。先日は、ジャムステック研究員の先輩と、アジアモンスーン、エルニーニョ南保振動(ENSO)、偏西風の関係やこれらをつなぐメカニズムは何なのか、ということについての勉強会をしました。読んだ論文はこれです。「エルニ…

海水準の変動は何で引き起こされるか?

今日の論文は、海水準(sea-level)の変化が何によって引き起こされるかをレビュー(まとめ)た論文です。近年の海水準の変動が何によって引き起こされるかをきちんと検証するのはとても難しく、地域差も大きくでます。海水準変動を引き起こす原因は、陸地にあ…

氷期と間氷期の洞窟の中の気温の違い

今日の論文は、洞窟の気温が2万年前は現在と比べてどのくらい変わっていたのかを論じたものです。洞窟には、石筍や鍾乳石のような石灰質でできた生成物があります。 その中の酸素原子と炭素原子の同位体比を使う事で、過去の洞窟の気温が分かるという論文で…

今日の論文[Body temperature of modern and extinct vertebrates from 13C-18O bond abundance in bioapatite]

生物の「歯」から、その生物の体温がわかる!という話。歯のアパタイトの同位体比13C-18Oの結合の度合いが、体温だけに依存するそうで、絶滅した生物の骨などを測定することで、絶滅した生物の体温がわかります。 タイトル:Body temperature of modern and …

今日の論文[Ventilation of the Deep Southern Ocean and Deglacial CO2 Rise]

以下は備忘録ですので、分かりにくいものもあるかもしれません。。。 今日からは論文を一個ずつ読む予定なので、毎日読んだ論文を紹介していきます。今日読んだものは、今から1万8千年前頃におこった大気中のCO2増大の謎に関する論文です。 CO2がなぜ多く…