南極の氷床コアはミランコビッチ理論を支持しない?

さて、私も博士課程の2年生になりました。
あと実質1年半で博士論文を書かねばなりません。
1年半とは、長いようで短い。後悔せぬようやっていきたいです。

今日の論文は、nature 3月3日号のLetterから南極の氷床コアについての論文です。

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これまで、南極の氷床コアに記録されている氷の酸素同位体比の変動は、南極の気温を反映していると考えられてきた。このようにして復元された南極の気温は北半球の夏のN65°の日射量変動と相関しており、南半球の夏の日射量とは相関していないので、北半球のN65°の夏の日射量が全球的な気候変動を支配しているというミランコビッチ理論を裏付けるものとされてきた。
しかし、今回の研究では、南極の降雪がどの季節に多いのかを南極のいくつかの基地で観測して調べた結果、南半球の夏の積雪は冬に比べて少ないことが分かった。この効果を入れて(Recording system)、降雪量を季節的に重み付けし、南極の日射量の変動カーブを計算すると、氷床コアの記録とよく一致していることが分かった。細かく見れば、特に融氷期で気温変動のカーブよりも積雪量で重み付けされた南極の日射量のカーブがリードしているが、大局的には一致している。また、この積雪効果を入れた日射量のカーブは、前述の北半球の夏の日射量変動のカーブとも一致している。
つまり、南半球のlocalな日射量がたまたま北半球の夏の日射量と一致していたのだ。南半球の氷床コアの記録はミランコビッチ理論を支持すると考えられてきたが、南極の氷床コアのデータの取り扱いには特に気をつけるべきである。

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Synchronicity of Antarctic temperatures and local solar insolation on orbital timescales

Thomas Laepple, Martin Werner & Gerrit Lohmann
Nature 471, 91–94 (03 March 2011) doi:10.1038/nature09825