海水準の変動は何で引き起こされるか?

今日の論文は、海水準(sea-level)の変化が何によって引き起こされるかをレビュー(まとめ)た論文です。

近年の海水準の変動が何によって引き起こされるかをきちんと検証するのはとても難しく、地域差も大きくでます。

海水準変動を引き起こす原因は、陸地にある氷床が融けること、海水の温度が上昇することによって海水が膨張すること、地殻の上下変動(例えば、地殻の上に氷が乗っていてそれが融けることでリバウンドする)、陸地に水が貯蔵されること、などの複雑な原因によって引き起こされます。

何が海水準の変動に一番効いているかは、タイムスケールの違いによって変わってきます。

(例えば、10万年スケールだと、氷床の消長によって海水準が100m以上も変動します。)


しかし、どの原因がどれだけ、という定量的な評価はとても難しいと言われています。

近年の研究からは、衛星技術の進歩によって海水の水温・塩分(Argo networkプロジェクト)と重力場(GRACEプロジェクト)の観測値を大量に得ることができるようになり,今後の研究に期待できるということでした。

ーーーー
氷期間氷期のタイムスケールでは、海水の膨張・収縮による海水準上昇は氷床の消長による効果に比べてとても小さいという結果です(ただし、これはまだきちんと検証する必要があるようですが)。

一つ前の間氷期では、海水準は4−6m現在よりも高かったようです。

しかし、今から1万〜7千年前くらいの前期ー中期完新世では、現在よりも気候が温暖だったことが言われていますが、グリーンランドの氷床が融けることによる海水準変動はたったの数十cmだと推定されています。

ーーーーー

ただ、確実にわかっていることは、地域ごとに海水準の上昇率は異なることだけで、空間的な海水準変動予測の研究は今後の研究ターゲットになるだろうということでした。

ーーーーー

タイトル:Identifying the causes of sea-level change
Milne et al. (2009) Nature geoscience, July