ヤンガードリアスに熱帯収束帯が南下した証拠

論文紹介、5日目に突入です。
3日坊主で終わらなくてよかった(汗)

来週末に、北海道で行われるIGCP581のシンポジウムで発表しなければいけないので、これからしばらくはアジア〜インドの石筍や海、湖の記録にフォーカスして紹介していきます。

本日は、2010年の論文でインドネシアの石筍のδ18O,δDを過去1万2千年前から復元した論文です。

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インドネシアの石筍のカルサイト(方解石)のδ18Oと流体含有物(石筍の中に含まれている当時の水)のδ18O, δDを過去1万2千年前から現在まで高解像度で復元した。水のδ18OとδDを測定することで、当時の洞窟の気温が推定できる。
このロケーションは、インドネシア〜オーストラリアの夏のモンスーンに影響を受ける地域で、12月〜3月までの雨季に降る雨は年間降水量の65%を占める。
δ18Oの結果は、グリーンランドで急激な寒冷化が起ったヤンガードリアス期(YD)に、カルサイトのδ18Oは軽くなっていた。また、YDで5℃洞窟の温度が低くなっていたことがO'Neil et al., 1969から導きだせる。この効果を考えても、約0.7‰のδ18Oが軽くなっていたことを意味し、これは降水のδ18Oが軽くなっていたこと、つまり降水量が増えたことを示唆している。
YDには熱帯収束帯が南に移動したことがモデルからも示唆されており、この南下によって、この地域の降水量が増えたと考えている。

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Younger Dryas-Holocene temperature and rainfall history of southern Indonesia from δ18O in speleothem calcite and fluid inclusions

M. Griggiths et al.
Earth and Planetary Science Letters 295 (2010) 30-36