円石藻は海洋酸性化に影響を受ける

あっという間にもう8月になってしまいました。。。
論文紹介も学会参加などでさぼってしまって、、、すみませんっ。


今日は、先週号のnature から、海洋酸性化で炭酸塩を作る生物、円石藻にどのような影響を与えるかという論文を紹介したいと思います。

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人間活動によって大気中へ放出される二酸化炭素の3分の1は、海洋に吸収されている。海洋への二酸化炭素の吸収が増えると、海洋の酸性化を引き起こす。これによって影響を受けるのが、サンゴや有孔虫、円石藻といった炭酸塩の殻を作る生物たちだ。これらの生物は、海洋中の炭酸イオンを使って炭酸塩の殻を形成している。Beaufort et al. (2011)らは、現在の海洋のさまざまな地域から海水と円石藻を採取し、水温や塩分、アルカリ度、pH, 炭酸イオン濃度などのパラメータと円石藻の重さを比較した。また同時に、堆積物を用いて過去4万年間の円石藻の重さと、二酸化炭素分圧との関係を議論した。その結果、炭酸イオン濃度が増えると(つまり重炭酸イオン濃度が減ると)、円石藻の重さは重くなる、つまり作られる炭酸塩が増える傾向がある。過去4万年間の間には、二酸化炭素濃度が増える(これは炭酸イオンが増えることを意味する)と円石藻の重さが軽くなるという傾向もあることが明らかとなった。これらの結果から、海洋中の炭酸イオン濃度が減るにつれて円石藻が作る炭酸塩の量(石灰化量)も減ることが分かり、将来起るであろう海洋酸性化の世界では円石藻の石灰化量も減少することが予想される。しかし、E. huxleyiという種は、二酸化炭素濃度が高い現在の海域においても、炭酸塩を多くつくる例があることも今回明らかとなった。したがって、海洋酸性化への円石藻の応答は単純ではない。5500万年前の海洋酸性化の出来事で円石藻の石灰化量の変化があまり明らかではなかったが、このようなこのような複雑な応答が理由かもしれない。

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Sensitivity of coccolithophores to carbonate chemistry and ocean acidification
L. Beaufort, I. Probert, T. de Garidel-Thoron, E. M. Bendif, D. Ruiz-Pino, N. Metzl, C. Goyet, N. Buchet, P. Coupel, M. Grelaud, B. Rost, R. E. M. Rickaby & C. de Vargas

Nature 476, 80–83 (04 August 2011) doi:10.1038/nature10295