「背信の科学者たち」

久し振りにブログを書きます。
最近読んだ本で、研究者の方にぜひオススメなものをご紹介したいと思います。

タイトル:「背信の科学者」
著者:ウィリアム.ブロード、ニコラス.ウェイド

概要:
論文の捏造やデータの改ざんなど、科学者の不正行為が後を立たない。ニュートンやメンデルといった歴史上の大人物でさえも不正の事実がある。しかし、科学コミュニティは依然として不正行為をコミュニティ全体の問題だとは認識していない。なぜ、不正行為は繰り返されるのか、そこにはどういう背景や科学者コミュニティの構造があるのか、科学ジャーナリストである筆者らが分析する。

レビュー:
科学者というものは、純粋な知的好奇心から研究を行い、客観的に研究結果を分析し、何のバイアスもなく研究成果を公表すると見なされている。もちろん、これは科学者の理想像であるが、一側面でしかないことをこの本で再認識させられる。科学者も科学者の前に人間である。本書に列挙された多くの不正行為の事例が物語っているのは、程度の差こそあれ、自分の都合のいいようにデータを解釈したり、歪めたりすることは、人間のの性とも言える。不正行為やそれにまつわるトラブルは当然起こるものとして認識しなおさなければならない。不正行為をなくすには、コミュニティをあげての対策必要であり、システム自体の改革が必要であると本書では述べられており、私も賛成する。具体的には、多すぎる学術雑誌を減らすこと、論文の投稿システムを見直すこと、研究費を獲得するときの評価システムを再考すること、が挙げられる。本書が書かれて30年近くなるが、まだ科学コミュニティのシステムは改革されないままである。