征服者はいつか去る、しかしこの偉業は永遠である part2

<前回からの続き>

前回では、18世紀末のフランスで、科学が発展したのは社会状況や政治体制の変化と関係があったことを述べた。


歴史的に見ても、「国がいかに安定しているか」は自国の科学の発展に大いに関係していると言える。

自由な発想で研究ができ、資金が潤沢にあるという環境は、科学技術の進歩を促進する必要条件である。



しかし、戦後の日本は必ずしもそうではなかった。

敗戦国だったために、自由な研究ができず、特に航空と原子力に関わる研究は禁止された。
そんな状況で、発展したのは「理論物理学」の分野である。

紙と鉛筆があればできる研究だったために、みんなこれをやったというのだ。

その結果、ノーベル賞物理学者の湯川秀樹さんや、朝永振一郎さんなど有名な物理学者を輩出した。
以前、理論物理学者の江沢洋先生にお話を伺ったときにも、「本当は航空がやりたかったけど、戦後でできなくて理論物理を学んだ」とおっしゃった。


自分のやりたかった研究ができなくてもしょうがないと言って、できる範囲で頑張ろうじゃないかという心持ちはすごいなと思う。


古今東西、国や戦争で運命を左右された科学者はたくさんいるだろう。

しかし、科学の偉業は決して色あせない。科学が始まった時から現代まで、科学の流れは途絶えることがない。現代の科学には、失敗も成功も含め、過去からの研究の流れを汲んでいる。私たちが行う研究はいつでも過去の偉業を参照し(参照することができ)、次の新しい発見につなげていく。